知床峠を越えて羅臼町へ
朝6時に目覚める。バンガローだったのでぐっすり寝ることができた。炊事場にある手洗い場に歯を磨きに行く途中、足元を動物が走っていくのを見かける。もしや!?テントを齧った犯人!その特徴的な長い尻尾。可愛らしいキタキツネだった。
昨日登山をしたからなのか空腹、バイクに乗って下に降りたところにあるセブンイレブンに向かう。セブンイレブンの前にある駐車場にバイクを停めて、朝食を買ってバイクに戻ると、隣の駐車場にW650に跨った黒いレザーのライダージャケットを着た男性が停車していた。
私がバイクに戻ってくると、男性はヘルメットを脱いで、これからどこに行くの?と話しかけられて、私は知床峠に行きますよと答える。私が聞き返すと男性は羅臼町に行くと言ってたので、知床峠越えるんですねと私が言うと、男性は羅臼町に行くのかい?と聞かれたので、私は羅臼町は通るだけですよと答える。
男性は一瞬、えっ!?って表情をしてから、羅臼町でクルーズ船に乗る話を始めた。よっぽど楽しみにしていたらしく話す時の表情は目が輝いていた。私は羅臼岳に登って満足したのでという話をしたら、男性の表情が、あぁ、、、という感じになる。おそらく私の事を自分と同じようなライダーだと思ったのか、そっちの人なんだという感じで会話が終わってしまった。
バイクに乗って、キャンプ場に戻る途中、さっきの男性との会話で、北海道に着いた日の話になった時の事を思い出した。私は到着した日にちと全然違う日にちを間違えて男性に話していた。なので男性からすると私は昨日北海道に到着して知床まで来たということになってしまう。ようやく途中から、いまいち会話が噛み合わなかったんだと分かってスッキリする。
さすがに初対面の人に突っ込めないよね。
キャンプ場に戻ると、受付の前に1台のステーションワゴンが停まってて、私の地元のナンバーだった。日本の果てで見たのは2台目だった。車の前に年配の女性がいて、ナンバーが私の地元だったんで思わず話しかけちゃいましたよと。両親が住んでますと話して、地元の地名を言ったら、めっちゃ近い!!とびっくりされる。
キャンプ場を8時半すぎに出発、知床横断道路を走る。9時すぎに知床峠に到着する。羅臼岳が目の前にあるので迫力がある。駐車場には記念撮影する人で溢れていた。昨日あそこに登った身からすると、そんなに感動もない。きっと登ってなかったら凄い!!ってなるんだろうけど。
ここから羅臼町へは峠を九十九折りに降っていく。昨日登った羅臼岳から見たクネクネの道はここだったようだ。ずっと知床五湖の方だと思ってた。
この高原の感じは、長野のビーナスラインを思い出す。ドライブやツーリングには最高だと思った。
峠を抜けてしばらく走ると沿岸へ出た。道の駅があったので休憩する。
羅臼町は通っただけなんだけど、西側にある斜里町のウトロは観光用の街って感じがするけど、こっちは生活感がある。
北海道の自販機は電子マネー対応が多い気がする。
道の駅から国後島が見える。こんなに近い。でもあそこにはロシア人が住んでて日本語が通じないと思うと不思議。
さて、ここからどうしようかが問題である。次の目的地は阿寒湖なんだが、根室に寄って納沙布岬に行ってからにしようか、そっちに行かず、そのまま行こうかと迷いながらしばらく沿岸を走る。
走ってたら向かいから見覚えのあるグラベルーロード走ってくる。知床のキャンプ場で隣だったダーストンギアのテントに泊まってたバイクパッキングの欧米人の旅人だった。確か私が羅臼岳に登山から戻ったらテントがなかった。目が合って手を振って挨拶した。
しばらく根室海峡の沿岸を走ってると標津町の街中に入った。
標津町の周辺ははサーモンの聖地のようで、道路脇にサーモン科学館なる看板を見かけた。
標津町から山間を走り阿寒湖温泉街へ
ちょうど昼前で小腹が空いてて、セブンイレブンに寄って、パンを買って食べる。この後どうしようかと迷って、北海道に来て以来、海沿いしか走ってないから、そろそろ内陸を走りたくなる。
阿寒湖に向かうことにする。標津からだと一本道で行けるっぽい。距離にして100km、2時間、休憩を入れても到着するのは15時過ぎ。ちょうどいい。
しばらく走ると中標津市内。ショッピングセンターやダイソーがあった。ここで羅臼岳の下山中に剥がれたソールをくっつけるボンドを買っとけばよかったと少し後悔。しばらくひたすら農園、牧場が続く。北海道は規模が凄い。進行方向の右手に大きな山が見えて、おそらく斜里岳かな。
しばらくして街中に入ると、道の駅があるので寄ってトイレ休憩。
この日は祝日だったので人が多い。この辺りは摩周湖、屈斜路湖、阿寒湖と湖が多くて温泉も湧いてるので、どこに行こうか迷う。
走り出すとすぐ林道。なんだか峠道を走る。北海道の山道は白樺やブナっぽい白い木が多くて、違う国に来たような気分になる。
温泉街はずれのキャンプ場に宿泊
15時過ぎに阿寒湖畔キャンプ場に到着する。連休最終日の夕方だからか一張りもテントがない。キャンプサイトにいるのは鹿だけだった。
受付で手続きをして、利用料金1000円払う。
キャンプ場の名前に湖畔とついてるけど、湖畔じゃなくて国道沿いにある。湖は温泉街にあるのでキャンプ場から500mくらい歩く。国道を挟んで向かいにアイヌ部落の入り口があって、なので観光するのは便利。
さすがに一人だと心細いので、駐車場に近い木陰にテントを張る。これで雨が降っても大丈夫だろう。さいあく目の前に東屋があるのでやばくなったら逃げ込もうという作戦。トイレもすぐ近くにある。
東屋にテーブルと炉があるので食事や焚き火もできる。
少し奥まった森の中のサイトの方へ歩くと足湯あり。ユックの湯だけにここは鹿が多い。
こっちもテーブルあるし、四阿だから正直迷ったけど、奥の方に動物の気配を感じてやめておいた。
ちなみに入り口近くにテントを張って気づいたのが国道を走る車の音と向かいのアイヌシアターのスピーカーから流れるムックリの音がビヨ〜ン♪ビヨ〜ン♪と21時くらいまで大音量で聞こえてくる。車の音はあまり気にならなかったけどムックリの音は人気のない真っ暗なキャンプ場聞くのは不気味。
アイヌコタンを散策
明日の朝から雌阿寒岳へ登山に行くので、その前に羅臼岳に登ったときに剥がれた靴のソールをボンドで補修したいので、アイヌコタンと温泉街を散策がてら補修用ボンドを探すことに。
キャンプ場を出て横断歩道を渡るとすぐアイヌ部落の入り口。
湖畔じゃないけど立地からすると観光するのに便利。
丸太船をチプと呼ぶらしい。最近読んだ本にイラクの湿原を木製の船に乗って旅する旅行記を思い出してしまって、気になってしまった。
ほんとに丸太をくり抜いただけの、丸太船。
アイヌシアター。ここから流れる放送が、キャンプ場まで聞こえてたんだ。大音量の放送はテーマパークに来た気分になる。夜間上映してるようなので行ってみたかったが、結局行けず。
思った以上に観光地。民芸品屋が立ち並ぶ。
アイヌ紋様がかっこいい。
木彫りとか刺繍とか独特だよね。
歩いてる道路の側溝から湯気が立ち上っている。
雄阿寒岳と阿寒湖。フォトジェニックだな〜。
日本100名山は対局にある雌阿寒岳。
キャンプ場の管理人の方に雌阿寒登ってくると話したら、地元では雄阿寒岳、雌阿寒の二つ合わせて100名山と言われていた。。
30分もあればアイヌコタンと温泉街を歩いて回ることができる。一通り散策してみて土産物屋とレストランとコンビニくらいしかなさそうで、結局コンビニで瞬間接着剤を買うことに。ついでに今晩の夕食と明日の登山のパンと行動食も。
キャンプ場に戻って補修完了。バイク乗ってても気になるからね。左足だったソール剥がれててもシフトカバーはめるから乗ってる時はいいけど、右足だからね。パカパカするの気になってしょうがないんだよね。
とりあえず軽い登山くらいだったら大丈夫そう。
夜のテント場でぜんぜん眠れず
それにしても寒い。9月の下旬だけど気温は一桁台。標高も少しあるせいだろうか。
1台の大型バイクが駐車場に停まる。20代後半くらいの青年で茶髪にメッシュの入った髪型にアメカジっぽい服装でライダージャケット。昔購入したバイク屋さんの整備士に似ている。
東屋を挟んで入り口に一番近い駐車場の前にテントを張っている。
東屋のテーブルに座ってたら、目の前を何度も横切るのが目に映る。奥に水場とゴミ捨て場があって往復している。
テント前には焚き火台とクッカー、トング、薪、装備一式並べて焚き火をしていた。そして何やら一人で喋ってるので、もしかしてYouTuberの方なのかな?と思ったけど独り言だった。
すぐ目の前の東屋に炉があるからそこ使えば後片付け楽だと思うんだけど敢えて自分の焚き火台を使っているのを見ながら、面倒とかそうゆう事じゃなくて自分の焚き火台で焚き火やるのが醍醐味なのかな。
相変わらず私はコンビニで買ったサラダと惣菜の春巻きをツマミに白ワインを少し飲んで、おにぎりとガスバーナーで沸かしたお湯を味噌汁の素は入った器に注ぐ。
正直自分一人だったら焚き火とか面倒だから滅多にやらない派です。
晩飯食いながら考えてたら、ふと気づく。俺そういえば1週間近くセイコーマートかセブンイレブンで買った食事しかしてない。普段は自炊派な自分にとってはびっくり。考えたら道北から道東までの店ってほとんどがコンビニでセブンイレブンかセイコーマートしか見てない。こんな田舎を旅してるのに食生活は時間のない都会の人みたいになってしまっている。
この後、駐車場に車が一台停まった。おそらく車中泊だろうか、朝まで停まってた。
この夜は、焚き火青年の独り言と水場を往復する足音、アイヌコタンから流れるムックリの音、国道を走る車の音、動物の鳴き声、煎餅マットで床冷えしてほとんど眠れず朝を迎えることとなった。
移動距離 187km 移動時間 3時間22分