タバコと過ごした数十年
喫煙を始めた年齢についてグーグルで検索したら面白い調査結果を見つけた。この調査だと喫煙者の半数は未成年で喫煙を始め、4割は未成年から習慣的に喫煙するそうだ。
コソコソ隠れて喫煙していた思春期の学生も、20歳を過ぎたら堂々と喫煙できるのだろうと思っても、結局のところは喫煙しない周囲に煙たがられ、気を遣いながらヘコヘコと頭を下げながら申し訳ない気分で喫煙しなければいけない。
喫煙者はとにかく肩身がせまい。
そんな喫煙者が誰にも咎められることなく人権が認められる楽園がある。壁がヤニで黄色く変色して、充満した煙を換気扇が吸い込む小さな部屋だ。人が多いと換気扇は煙に対応しきれず火事のように煙が部屋に充満する。この小さな部屋の灰皿の周りに先輩、後輩、学歴、職歴、性別、関係なく集まり、同じ喫煙所で顔馴染みになるとたわいもない会話をする。
それはインフラの整った、人の密集する場所である限り、国境を越えても変わらなかった。
気づけば都会の街中で喫煙場所を探すのがとても大変で、飲食店で喫煙するのも難しい時代になった。
煙のほとんどでない加熱式タバコが発売され、多くの人が加熱式タバコに変え、自分もいち早く変えた。
煙の匂いがなくなったおかげで喫煙しない人から嫌な顔はあまりされなくなった。
そこまでして吸いたいのかと言われたら、もはや自分の意志ではやめれない依存症という病気なのだからしょうがない。
喫煙を始めてから数十年が経っていた。
人のフリ見て我がフリ直せ
とあるスクールでプログラム言語を使った開発の実習をしていた。
朝出席してしばらくすると、昨日出された課題の答えのコードがホワイトボードに書かれるので、それを見ながら答え合わせする。
隣の席は朝っぱらからタバコ臭い、歳が4つ上の浅黒い肌と東南アジア風の容姿をした男性。タイピングがやたら強く、独り言が多い。横長につながった机で距離も近いので、その振動と独り言をまともに受けることとなる。
1時間毎に10分の休憩。休憩時間が近づくにつれてタイピングが強くなり、独り言が多くなる。休憩時間になると恐ろしい顔して喫煙所に走って行く。喫煙所から戻ってくると、あの恐ろしい顔が笑顔になっている。
時々喫煙所で一緒になると私の吸ってた加熱式タバコを珍しげに見ていた。
加熱式タバコに変えてから数年経っていた私にとっては紙巻きタバコが随分と過去のものに思えてしょうがない。ここの喫煙所の比率も紙巻きタバコと加熱式たばこが半々くらい。
問題なのは、結局のところ煙の出ない加熱式タバコを吸ってても、喫煙所で紙巻きタバコの喫煙者と一緒にいたらタバコの匂いが服にこびりつくので損した気分だ。
そしてこの2ヶ月間、隣の席のニコチン中毒末期症状を見続けて気付いた。
今ままで全くやめるつもりがなかったタバコ、そして一生喫煙するのだろうと思ってたタバコを禁煙しようと決断。
人のフリ見て我がフリ直せとはこの事だ。
タバコやめたら自由だった
禁煙外来に行かず、あっさりやめれて自分でも驚いた。
プログラミングを習いに行ったはずだったけど、プログラミングの方はイマイチ、しかし禁煙に成功してしまった。結果これで良かった気がする。
そして喫煙しなくなったら太るというのは本当だった。百害あって一利なしと言われるニコチンはやめると代謝が一時的に落ちるらしい。そして浮いたお金が食費に回ったせいもあるのだろう。
1日に数回あったタバコ休憩がなくなった。
街中や商業施設で喫煙所を血眼になって探すこともなくなった。
タバコに費やすお金と時間、ニコチンに支配されていた脳みそも解放された。
どう考えても得だよね。喫煙しない人生の方が。